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こんにちは、フードスコーレ校長の平井です。この秋から、「たべものざつだん」という場をはじめます。
醤油、海苔、梅干し、かつお節など…。どれも当たり前のように食卓にあるけれど、その向こう側には、思いがけない物語や、たしかな技術、人の手仕事がひそんでいます。ふだんの食卓で目にしているのは、そのずっと手前の部分──「おいしい」「ヘルシー」「安い」「かんたん」。そんな言葉を手がかりに食を選ぶのも悪くはないけれど、好奇心から、どうしてもその向こう側をのぞきたくなることがあります。
同じ食の世界でも、人によって見える景色はまるでちがいます。未来を憂う人もいれば、希望を見出して動き続ける人もいる。もがきながらもたのしそうに働く姿を見ていると、その “揺れ” こそが大事なのではないかと思うのです。だからこそ、この場を「雑談」と呼ぶことにしました。結論を出さなくてもいいし、正しい答えもなくていい。 「食好きです!」と胸を張る必要もありません。「あ、おいしいもんあった」とか、それくらいで十分です。雑談を聴いているうちに、すこしずつ「食べること」の輪郭が浮かび上がってくれば、それでいい。
食べものの知識をインプットする教室ではなく、食べものに向き合う姿勢をチューニングする時間。ラジオやポッドキャストを聴くように、ただ耳を傾けているだけでたのしい。それが「たべものざつだん」の理想です。
このシリーズでは、食の第一線で活動する方たちを案内人(ゲスト)に迎えて、雑談をしていきます。講演会でも、料理教室でもなく。雑談だからこそ見えてくる景色があります。食べものの話で、たのしくすごしましょう。
地理学者・湯澤規子さんが主宰します。
このアイデアを最初に相談したのは、地理学者で法政大学教授の湯澤規子さん。湯澤さんは、「食べる」という行為を文化や地理、暮らしの歴史と重ねて研究されてきました。
正しい答えを学ぶ時間ではなく、問いと出会う時間。答えのない時代に、自分にとっての「食べる地図」を描ける場所。いろんな人の言葉から、「食べること」の意味が立ち上がってくる。そんな機会をつくりたいと話したとき、湯澤さんも「それはおもしろいですね」と共感してくれて、この場をいっしょにつくることになりました。
地理学は「どこで、なにが、どうして起きているのか?」を考える学問。「食べる」という行為は、まさに世界を観察することでもある。地理学の視点を通すことで、いつもの食卓と世界のつながりが浮かび上がる。そんな広がりを、この場に持ち込みたいと思っています。
当日は、湯澤さんがゲストとともに、みなさんの前で雑談をしていきます。どうぞ気軽に遊びにきてください。お待ちしています。
(フードスコーレ校長/平井サトシ)
湯澤規子(ゆざわのりこ)
法政大学人間環境学部教授。筑波大学大学院歴史・人類学研究科単位取得満期退学。博士(文学)。「生きる」をテーマに当たり前の日常を問い直すフィールドワークを重ねている。専門は歴史地理学。主な著書に『胃袋の近代―食と人びとの日常史』(名古屋大学出版会)同書で、生協総研賞第12回研究賞、第19回人文地理学会賞(学術図書部門)を受賞。『7袋のポテトチップス―食べるを語る、胃袋の戦後史』(晶文社)、『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』(ちくま新書)、『焼き芋とドーナツ―日米シスターフッド交流秘史』(KADOKAWA)、同書で第12回河合隼雄学芸賞を受賞、などがある。
お迎えするのは、かつお節や醤油、海苔、梅干し、タネ ─ 食卓を支えてきた食の第一人者たち。そして、いっしょに雑談を広げてくれるのは、スープ作家や料理家、そして様々なシーンで食の未来に取り組む方たちです。
(以下、50音順)
有賀薫さん
スープ作家。シンプルで素材の味を生かしたスープや、料理・暮らしについてのアイデアを各種媒体やイベントで発信。『スープ・レッスン』(プレジデント社)『有賀薫の豚汁レボリューション』(家の光協会)など、著書多数。
大塚麻衣子さん
有限会社タイコウ 代表取締役。動物病院での看護師、料理人を経て、有限会社タイコウに入社。かつお節の目利きとしての技術を磨き、24年に先代より跡を引き継ぐ。料理人としての経験と培った知識を鰹節の目利きの技術と組み合わせ、料理人の好みや求める味に合わせて選別し、仕立て上げる、日本で唯一の鰹節コーディネーターとして活動。子供からプロの料理人そして同業者まで幅広く、食育活動から製造技術の指導まで行っている。http://www.taikoban.info/renew/
小竹貴子さん
クックパッド株式会社 広報部本部長 / 農林水産省 食育推進会議専門委員
1972年石川県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。株式会社博報堂アイ・スタジオでWEBディレクターを経験後、2004年有限会社コイン(後のクックパッド株式会社)入社。2006年編集部門長就任、2008年執行役就任。2009年、日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2010」を受賞。2012年、クックパッド株式会社を退社、独立。2016年4月に復職、現在に至る。また料理家として「ちょっとの丸暗記で外食レベルのごはんになる」(日経BP社)などの料理本出版、また料理の楽しみを伝えるクックパッドのポッドキャスト『ぼくらはみんな食べている』ではパーソナリティを務めている。
小林宙さん
2002年、東京都大田区生まれ。伝統野菜の種子を販売する「鶴頸種苗流通プロモーション」代表。古くから伝わるが消滅の危機にある野菜を多くの人に栽培・採種してもらうことで、タネを未来につないでいくことを目指し、2018年にタネ屋を創業。現在は、タネの販売のみならず、伝統野菜やタネに関する講演会への出講、イベントの企画・出演もおこなう。また、種苗業の歴史に関心があり、種苗業に関する歴史的資料の収集・公開をライフワークとしている。著書は『タネの未来―僕が15歳でタネの会社を起業したわけ―』(家の光協会)。上智大学文学部哲学科に在学中。
小桧山聡子さん
山フーズ主宰
「食とそのまわり」にある、もの・こと・感覚などをすくい上げ、考察・研究・創作・ご提案し、様々な形でみなさまの身体へお届けすることを生業としている。企業、美術館、ファッション・アート関連のレセプションなどで空間演出も含めたケータリングを多数手がけるほか、食を用いた撮影、イベント企画、ワークショップ、商品開発、執筆、講師、食をテーマにした作品制作など多岐にわたって活動。「食べるってなんだろう」「おいしいってなんだろう」そして「生きているってなんだろう」を様々な形で探求しています。
yamafoods.jp
佐藤一成さん
honshoku 食と農のディレクター
1987年生まれ、神奈川県出身。地域で起きている社会課題をその地域に必要な解決方法を提案〜実行まで携わるディレクター。特に第一次産業に関わる課題に「商品開発・物流構築・体験・宿泊」などで地域の価値を提供する。株式会社良品計画を兼務。団地活性化、都市公園活用、里のMUJIみんなみの里を中心としたエリア活性に従事。米の価値向上を目的としたプリンセスサリーの流通を手がける。
高橋万太郎さん
株式会社伝統デザイン工房 代表取締役。1980年群馬県生まれ。立命館大学卒業後、キーエンスを経て、日本の伝統産業の魅力を広めるため独立。全国400以上の醤油蔵を巡り、蔵元仕込みの醤油を100mlの小瓶で販売する「職人醤油」を運営。醤油の多様性を伝え、「選んで買う楽しさ」を広めている。著書に『醤油本』『にっぽん醤油蔵めぐり』がある。
竹内順平さん
プロデューサー
1989年生まれ。BambooCut(株式会社バンブーカット)代表取締役。梅干しの魅力に惹かれ2014年より梅干しの活動をはじめる。2020年に「立ち喰い梅干し屋」を東京ソラマチにオープン。2022年には梅干しと羽釜ごはんとお供のお店「梅と星」を浅草にオープン。おいしいお守り「備え梅」や、選べる梅干し「ウメボシカルタ」、梅干しづくりキット「梅子」などの商品開発も手がける。また2024年に塩をまぜるお店「ぐるぐるしゃかしゃ」を東京ソラマチにオープンするなど、幅広く活動している。https://bamboo-cut.jp/
沼田晶一朗さん
株式会社NUMATA HARUO SHOTEN、ぬま田海苔 4代目当主。前職はGap Japan、17年勤務したのち実家の海苔屋へ転職。海苔のこと、かっぱ橋のこと、お伝えしていきます。株式会社NUMATA HARUO SHOTEN、世界初の初摘み海苔専門店『ぬま田海苔』4代目当主。海苔と共に日本が誇る和食材がいつか世界中の食卓に並ぶことを目指し、日々研究中。アパレルで17年勤めた後、家業へ。浅草・合羽橋の本店では海苔の食べくらべを通しペアリングを提案。国内外の有名なシェフ、レストランからも信頼を得て、現在では100店舗ほど取引中。自身ではnoteで海苔や合羽橋について執筆中。https://note.com/numatanori1937
松見咲子さん
daytune./株式会社フローミュラ代表・哲学実装家
2012年4月に一橋大学社会学部卒業後、株式会社野村総合研究所(NRI)コンサルティング本部に入社。経営コンサルタントとして、官公庁の委託調査事業や、民間企業のマーケティング調査、新規事業支援などを担当。2016年にオンラインマニュアル作成・共有ツールを展開する株式会社スタディストに入社し、WEBマーケティング・ディレクションを経た後、2018年に独立。新規事業・組織開発等のコンサルティング業務に従事しながら起業準備を進め、2020年4月に株式会社フローミュラを設立。「心身のチューニング」をコンセプトとしたワーク/ライフスタイルブランド「daytune.」を立ち上げる。最初のプロダクトとして五感にはたらきかけるクラフトハーブティーの商品開発を行い、2022年6月より製造・販売開始。社会福祉法人石巻祥心会 福祉サービス事業所「くじらのしっぽ」にて製造拠点を立ち上げ、2023年5月より製造委託を開始。チューニングという哲学の社会実装及び「やさしい循環」のものづくりに取り組んでいる。求職者支援訓練「ハーブセラピスト科」修了、日本メディカルハーブ協会(JAMHA)認定ハーバルセラピスト取得
「たべものざつだん」では、5つの食を順にひらいていきます。
第1回 2025年9月30日(火)
醤油をざつだんする
高橋万太郎さん × 有賀薫さん × 湯澤規子
全国400以上の醤油蔵を訪ね歩き、多様な蔵元仕込みの醤油を届ける「職人醤油」を運営する高橋万太郎さん。醤油の奥深さと「選ぶ楽しさ」を広めてきました。一方、シンプルで素材の味を生かしたスープを提案し、料理や暮らしのアイデアを発信し続ける有賀薫さん。ふたりの視点から日常の食卓にひそむ新しい景色を探ります。
第2回 2025年10月7日(火)
海苔をざつだんする
沼田晶一朗さん × 松見咲子さん × 湯澤規子
アパレル業界から転じ、世界初の初摘み海苔専門店「ぬま田海苔」4代目として活動する沼田晶一朗さん。浅草・合羽橋の本店では食べくらべやペアリングを提案し、国内外のシェフからも信頼を集めています。一方、「心身のチューニング」をテーマにブランド「daytune.」を立ち上げ、五感に働きかけるハーブティーの開発や循環型のものづくりを実践する松見咲子さん。海の恵みと都市の暮らし ── 海苔とハーブ、食と哲学の視点から食の未来を語ります。
第3回 2025年10月21日(火)
タネをざつだんする
小林宙さん × 佐藤一成さん × 湯澤規子
伝統野菜のタネを未来につなぐため、15歳で「鶴頸種苗流通プロモーション」を立ち上げた小林宙さん。販売や採種の呼びかけを通じて、多様なタネを守る活動を続けています。良品計画ソーシャルグッド事業部の佐藤一成さんは、暮らしや地域の課題を事業にひらく取り組みを実践。「残すタネ」と「社会のデザイン」、二つの視点から食と未来を考えます。
第4回 2025年11月4日(火)
梅干し、塩をざつだんする
竹内順平さん × 小竹貴子さん × 湯澤規子
梅干しや塩の魅力を伝える活動を続ける「bambooCut」の竹内順平さん。古くから受け継がれてきた知恵をどう残し、未来につなぐかを考えています。一方、料理や食の文化を多くの人の日常に届けてきた小竹貴子さんが、昔ながらの知恵と現代の暮らしを行き来しながら、“食べる”をあらためて見つめるざつだんです。
第5回 2025年11月18日(火)
かつお節をざつだんする
大塚麻衣子さん × 小桧山聡子さん × 湯澤規子
「目利き」がいる日本で最後のかつお節屋「タイコウ」の大塚麻衣子さん。削る、煮出す、香りを立てる──鰹節に込められた深さを伝え続けています。そして、「食べるってなんだろう」をテーマに、作品や空間演出、ケータリングなど食を多様に表現する「山フーズ」の小桧山聡子さん。かつお節の確かな技と、食をめぐる自由な表現が出会うとき、五感に響く新しい物語が立ち上がります。
会場は、東京・浅草にある「梅と星」の2階にある「うわのそら」。飲食店の熱気や人の気配が漂う中で、食べものの話をするのにぴったりの場所です。
梅と星
江戸の風を感じる東京・浅草にある「おいしい寄席」をテーマにしたごはん屋さんです。炊き立ての羽釜ごはんと最高の梅干したちとごはんがすすむお供たちを頬張れます。絶品梅干しサワーや自家製梅酒のほか、「梅と星」謹製のおいしいお供や、かわいいもの、縁起物も販売している。
https://ume-hoshi.jp/
営業時間:9:00〜17:00(定食 平日L.O.15:00/土日祝L.O.16:30)
定休日 :月曜日(月祝は翌日)
住 所 :東京都台東区浅草2-2-4
当日のお食事について
「たべものざつだん」では、「梅と星」が用意する特別なお食事をおたのしみいただきます。羽釜で炊いたごはんや、オリジナルの梅ドリンクなど、心と体にやさしい料理を予定しています。
定員:20名
場所:「梅と星」内 2階「うわのそら」(東京都台東区浅草)https://ume-hoshi.jp/
期間:2025年9月〜11月(ほぼ隔週火曜日)
回数:全5回
時間:18:30〜21:00
① 全5回チケット 30,800円(税込)
全5回チケットの申込方法
・全5回チケットは、5回分の参加料+各回の食事代を含みます。
・このページの一番下にある「プログラムに申込む」から、お申し込みフォームへお進みください。必要事項を入力のうえ、お支払いください。
・お支払いはクレジットカードのみとなります。
・スコーレメイトに登録をされていない方は、お申し込みと同時に自動で無料登録されます。
・スコーレメイトに登録済みの方は、マイページにログインしてからお申し込みください。
② 1DAYチケット 6,930円(税込)
1DAYチケットの申込方法
・1DAYチケットは、1回の参加料+食事代を含みます。
・1DAYチケットは 、こちらの「Peatix」 にて販売します。リンク先から参加する回のチケットをお買い求めください。
応募締切
「たべものざつだん」は、先着順、定員になり次第受付終了となります。
全5回チケット:9月27日(土)18:00まで
1DAYチケット:各開催日の3日前まで
・第1回 醤油をざつだんする(9/30開催):9月27日(土)18:00まで
・第2回 海苔をざつだんする(10/7開催):10月4日(土)18:00まで
・第3回 タネをざつだんする(10/21開催):10月18日(土)18:00まで
・第4回 梅干し、塩をざつだんする(11/4開催):11月1日(土)18:00まで
・第5回 かつお節をざつだんする(11/18開催):11月15日(土)18:00まで
申し込み後の解約について
お申し込み後の解約は、お受けできません。
やむをえないご事情がある場合は、
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